私たちが目指す研究
基礎研究とその応用
上皮バリアについての基礎的な理解の向上はもちろんですが、上皮バリアの任意の操作方法の開発も目指しています。現代において、基礎研究は、医療への応用が現実に考えられるようになってきています。基本的な概念の開拓や技術革新も多く、それらは医療を変えていくことでしょう。従って、基礎研究の重要性は非常に高まっているといえます。しっかりした基礎研究により、応用上の問題点に対処できる、大きな発展が期待されます。
新しい概念
基礎研究に携わるものとして、新し概念を確立することは大きな夢であり、目標のひとつです。
そこに至るためには、研究へのモチベーションが保たれることはもとより、人的・物質的環境も重要です。研究を心からエンジョイできる心の余裕も必要と思われ、精神性を大切にした、心に響くサイエンスを目指したいと思います。
女性研究者としては、マイノリティーとして社会的にも難しいことが多々ありますが、あくまでサイエンスにこだわりたいと思います。立場、経歴、生活、年齢、性別、などの差別のない、個性を大切にできる状況が理想ですので、そのために努力していきたいと思います。
現状
先進的イメージング技術や構造解析などにより、TJ-アピカル複合体が分子構造レベルで理解されれば、巧妙な上皮バリアの操作が可能となります。また、私共が見出しているアピカル複合体の機能未知の構成分子を欠損した上皮細胞シートは、神経管の閉鎖にも必要不可欠なアピカルコンストリクション(Apical Constriction)という現象が起きなくなるなど、上皮バリア特性が大きく変化します。複数の細胞内の主要なシグナル経路に影響を及ぼすという予備的な知見も得られており、現在、解析を進めています。
これらのシグナル経路の操作が、上皮バリアの操作につながると期待しています。
上皮バリアを任意に操作できれば、上皮バリア変調を原因とする種々の病気を予防し、治療できる可能性があります。私共は、TJ 関連分子の遺伝子改変マウス解析により、アトピー性皮膚炎(Cldn1KD) 、肝代謝異常 (Cldn3KO) 、全身性炎症傾向 (OccludinKO) など、種々の病態が上皮バリアの変調により、引き起こされることを見出しています。上皮バリア操作法の開発は、上皮バリア変調を原因とし、全身に波及する多くの病態に対して、根本的な解決策を与える可能性が高いと考えています。
生体構築に必要不可欠な上皮バリアをTJ-アピカル複合体を軸として統合的に理解することや、上皮バリアから生体機能の制御機構に迫るというアプローチは、独自性・新規性が高いものです。私共は、基礎研究としての性格を維持しながらも、上皮バリア操作法の開発を加速させ、医療応用面での社会的な貢献を目指しています。
将来
現状を踏まえて、常に将来を考えていきたいと思います。「視て考えて科学する」の原点を大切にし、常にチャレンジを考えていきたいと思います。